2022/09/17

地域とコンテンツ

大人の味に目覚めた新潟ロケ |地域と映画~アンチカの不定期コラム~

新卒で入社したCMプロダクションの先輩たちは、とにかく飲むことが好きだった。
ほぼ毎晩仕事 終わりには表参道の安居酒屋かバーへ連れていかれ、制作部唯一新人の僕はとにかくご馳走 になった。
その分、それぞれ先輩たちの撮影現場の助手としてたらい回しにされ、気付けば入社 して3ヶ月休んでいなかった。
今なら笑えない、かなりヤバく嫌がられるブラックな環境だっただろ う。でもその分仕事は早く身に付いてたと思う。
プロになる為にはそんな時期も必要だったような 気もする。 


そんな酒好き先輩の中でも岩手出身で日本酒好きのAさんと米どころ新潟ロケへ。
これは ただでは済まないだろうなと思うや否や、移動日初日の昼食で入った蕎麦屋店内の貼り紙に 【峰乃白梅、入荷!】を見つけたAさん、

「おー!これは!!安藤〜、飲むぞ!」 

「え?先輩!まだ昼ですけど?」 

「何言ってんだよ!峰乃白梅だよ!幻の越の三梅だぞ!」 

「何すかそれ?」 

「かあ~、これだから今の若い奴はダメなんだよ!いいから飲むぞ」 
(これも今ならアウトですよね、汗) 

日本酒は、学生時代に先輩たちに無理やり飲まされて、道路わきの電信柱を抱いて夜を明かし た経験もあり、正直あまり好きではなかったから恐る恐る口にすると、 

(え?何これ?めちゃくちゃフルーティーで飲みやすい、これが日本酒??)

「どうだ?」 

「美味いっす!」 

「だろう~、お前も大人の階段ひとつ登ったな。じゃあ晩飯は日本酒巡りで決まりだ!」 

このロケまで自分の食事の好みなんて全く気にしていなかったし、いわゆる子供が好きな、ラーメ ン、カレーライス、唐揚げ、ハンバーグなどを好んで食べていたし、刺身や魚系の和食は避けていたと思う。
だからこそかもしれないけど、この日の晩酌で出会った『沢蟹の素揚げ』の美味しさ は日本酒ともあいまって一生忘れられない体験となり、晩酌人生が始まった。


日本酒と和食の美味しさを知ってしまった僕は、そのロケ後からしばらくは和食にはまり、小料理屋に通ったりして食のバリエーションを楽しんでいたのだが、日本酒を飲んだ次の日は二日酔い になってしまう事が多く(もちろん飲み過ぎということもあるんだけど)どうも残りやすい体質らしい と分かってからは休み前だけに飲むことに決めて、それは今も続いている。


あれから35年も経ってしまったけど、あれ以来『沢蟹の素揚げ』を食べていないので、近々新潟 へ旅に行こうかな。
寺泊の蟹ラーメンも食べたいし...。





筆者:安藤親広

明治大学商学部卒業。
東京コマーシャルフィルム株式会社4年、株式会社ロボット31年在籍し、
トータル35年、映像・映画制作一筋。現在フリーランスのプロデューサー。

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