2022/10/06

地域とコンテンツ

普通って何だ?たまり醤油事件の屋久島ロケ |地域と映画~アンチカの不定期コラム~

たまぽんギフト事業に顧問として活動中で、全国各地をロケで飛び回っている映画プロデューサーの安藤親広氏に、

「地域と映画」というテーマでコラム記事の執筆をお願いしています。
今回はシリーズ第二回目の記事です!



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屋久島の縄文杉って知ってますか? 

諸説ありますが、樹齢7200年位らしいです。(2000年説もありますが...) 

そんな御神木的存在の前で、5歳の男の子と女の子が無邪気にかくれんぼをしているという建設 会社の企業CMのロケで、プレロケハン、スタッフロケハン、本番撮影と3回、宮之浦岳の中腹、標 高1280mの登山とも言えるハードなロケでした。 

本番直前の準備では、この過酷なロケを無事に成功させる為、機材等を運んでもらう人足の方を 募ったり、ある程度登山的に必要な物資を入念に買い込んだり、資材や機材を山小屋まで運ぶ 為に、電力会社の運搬用トロッコの使用許可をお願いしたり等、バタバタしている日々のある日 の夕食でちょっとした事件?がありました。 

それは島でも評判のいい寿司屋でのこと。

晩酌用に刺し盛りを頼み、豆皿の醤油を付けて口に入れたやいなや、口の中に予想していなかった甘さが広がり、思わず刺身を口から出してしまっ たのだ。
そうです!九州のたまり醤油は甘いのです。知らなかった...。

醤油を甘辛くした味付けは、僕にとってお餅の磯辺焼きやお煎餅の味でしかなく、お刺身に甘い 醤油なんて!食べられない!
すかさずお店の方に、

「すみません!普通の醤油下さい!」 

「...普通のしょうゆって何だ?うちではこれが普通の醤油だよ!」 

(はあ?カッチーン!) 

若気の至りで頑固にもその醤油はいっさい使わず、お寿司もわさびだけをさらに付けて涙目になりながら、ビールと日本酒で胃に流し込むという何とももったい残念な食事だったと今でも後悔している。

その話を旅館の女将さんに愚痴ったら、 

そういう時は、キッコーマンあります?よ〜」 

「え?キッコーマンが普通の醤油では?」 

「こっちの普通は甘いの。甘くないのはキッコーマンよ」

「お味噌汁だって、あなた達には甘いんじゃない?」 

「そう言えばそうでしたね、汗」 

(郷に入りては郷に従え)と無知な若造が身を持って経験したのである。

 

合流するスタッフの為にも「キッコーマン」は必要だと判断した僕は、その後スーパーへ買い出し に行くと、本州よりも3倍高い値段がついてて驚きました。

まあ島なので高いのは当たり前なんですけどね。

今では甘いたまり醤油で刺身や馬刺しをいただける大人になりましたが、 本当に「普通」っていう単語は気をつけて使わないといけませんね。 

特に今は食べ物以外で気を使わなければならないことが多いですから...。



筆者:安藤親広

明治大学商学部卒業。
東京コマーシャルフィルム株式会社4年、株式会社ロボット31年在籍し、
トータル35年、映像・映画制作一筋。現在フリーランスのプロデューサー。

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