2023/01/30
北海道
スタジオジブリ「思い出のマーニー」〜北海道の聖地巡礼スポット5選〜|釧路湿原・厚岸駅・藻散布沼など
スタジオジブリ作品「借りぐらしのアリエッティ」を手掛けた米林 宏昌監督が、2014年に制作したアニメーション映画「思い出のマーニー」。
イギリスの児童文学を原作としており、その世界観を損なわないようにと、アニメでは北海道の湿地帯に場所を置き換えて作られました。
意外にも、北海道を舞台とした物語が少ないジブリ作品。この記事では、北海道が「思い出のマーニー」の舞台として選ばれた理由を考察しながら、聖地とされている場所を5箇所ご紹介します。
「思い出のマーニー」の作品概要
・原作者 ジョーン・G・ロビンソン「思い出のマーニー」
・制作会社 スタジオジブリ
・監督 米林 宏昌
・制作 鈴木敏雄
・脚本 丹波圭子 安藤雅司 米林 宏昌
・主題歌 プリシラ・アーン「Fine On The Outside」
・声の出演 高月彩良 有村架純 松嶋菜々子他
・公開月:2014年7月
・PV:https://www.ghibli.jp/marnie/trailer/index.ht
「思い出のマーニー」のあらすじ
物語の主人公は両親を幼くして亡くした12歳の少女、杏奈。ある出来事をきっかけに養母の頼子に愛されていないと感じた杏奈は、周囲に心を閉ざすようになったのでした。悪化する持病の喘息を治療するため、杏奈は夏の間だけ、北海道の田舎にある親戚の家で暮らすことになります。
その田舎町で、杏奈は湿地帯に佇む古い洋館を偶然見つけます。その洋館は、今は誰も住んでおらず、町の住人から"湿っ地屋敷"と呼ばれているのでした。杏奈は不思議と洋館に懐かしさを覚え、その噂を聞いた夜から、湿っ地屋敷とそこに住む金髪の少女の夢を見るようになります。
ある日、町の神社でお祭りが開かれますが、同世代の子供たちに馴染めずその場を飛び出した杏奈は1人、気になっていた入江に向かいます。そこに現れたのは、夢に登場した金髪の少女でした。マーニーと名乗る金髪の少女と杏奈はすぐに、すぐに仲良くなりました。
お互いを深く知り合うにつれ、杏奈はマーニーの心の奥にある深い悲しみを知ります。「マーニーを助けたい」と奮闘する杏奈でしたが、マーニーは忽然と杏奈の前から姿を消します。マーニーの存在を知る村人が誰もいない中、杏奈は「マーニーを知っている」という老婦人・久子に出会います。不思議な少女マーニーの正体とは...
自分の生い立ちに悩み孤独を抱える少女杏奈が、不思議な少女マーニーと出会い、葛藤しながらも心を開いていくファンタジーアニメです。
米林監督の決意の現れ!?北海道が物語の舞台に選ばれた理由とは?
イギリスで生まれた「思い出のマーニー」のモデル、他にも候補が上がっていたそうです。
当初、宮崎駿監督から「舞台を瀬戸内にしたらどうか?」と打診を受けた米林監督は、「それでは「『崖の上のポニョ』みたいな感じでイメージに合わない」と断ったのだそうです。それだけ、「脱宮崎監督」作品を意識した、米林監督の強い意志が感じられる作品ともいえるでしょう。「思い出のマーニー」は、ジブリの二大巨頭である宮崎・高畑監督が関わっていない初めての作品となりました。
また、スタジオジブリの公式HP内で、米林監督は企画意図についてこう語っています。
原作を読んでからずっと頭に残るイメージがありました。美しい湿地に面した石造りの屋敷の裏庭で、手を取りあって寄りそっているアンナとマーニー。月光に照らされながらワルツを踊ってもいいかもしれない。ふたりの気持ちが繋がるその傍らにはいつも、美しい自然と、心地良い風と、昔馴染みの音楽があります。(スタジオジブリ公式HPより引用)
このイメージにぴったりだったのが、広大な土地を持ち、自然豊かな「北海道の湿地」だったのでしょう。
これまでスタジオジブリ作品で登場することの少なかった北海道を舞台に選んだことで、米林監督の特徴でもある繊細かつ、みずみずしい画が引き立つ作品となっています。
映画でモデルとなった「北海道の湿地帯」とは?原作の地との共通点を探してみた
スタジオジブリの公式HPでは、物語の舞台は「北海道の湿地帯」と明言していますが、具体的な地名には触れていません。しかし、「北海道の湿地帯」と聞いてまず思い浮かぶのは、北海道東部の釧路平野に位置し日本一の面積を誇る「釧路湿原」でしょう。
約2万6000haもの広大な面積を持つ釧路湿原は、釧路市、釧路郡釧路町、川上郡標茶町、阿寒郡鶴居村の4つの市町村にまたがっています。なかでも釧路は、「思い出のマーニー」の原作の舞台となったイギリスの風景を連想させる土地です。
たとえば、釧路は霧が頻繁に発生することで有名で、「日本のロンドン」とも言われています。 特に6〜 8月の霧発生日数は約50日(釧路地方気象台HPより)と、月の約半数が霧になってしまうことも。夏の釧路は「霧の街」と化し、一面神秘的な雰囲気になるのです。
あわせて、夏が涼しく過ごしやすいのも、釧路とイギリスロンドンが似ているところの 1つかもしれません。釧路は 8月の平均気温が15〜18℃と、道内でも特に涼しく避暑地として有名です。一方でロンドンは、北海道より北緯が高いものの西岸海洋性気候のため夏の平均気温も 20℃前後と穏やかな気候です。
同じような気候の特徴を有する釧路とイギリスロンドン。アニメ版の舞台として釧路湿原が選ばれたのも納得です。
モデルとなった聖地5つを詳しくご紹介
ここでは、映画のモデルとなったと言われる5つのスポットをご紹介します。どの場所も電車で行くには不便な場所にあるため、車で周るのがおすすめです。
■釧路湿原
最初にご紹介するのは、先ほども触れた、日本一大きい湿地帯として有名な「釧路湿原」です。1980年に希少性の高い生態系を保護するため、湿原の一部が日本で初めてラムサール条約に登録され、その7年後には国立公園に指定されました。特に、釧路町にある細岡展望台から眺める釧路湿原の景色は圧巻です。
映画の中で、釧路湿原の特定の場所を表すシーンはありません。しかし、緑豊かな大湿原を川が蛇行している風景や、ヤチボウズが生い茂る湿地帯の風景など、アニメと重なる風景が釧路湿原には多数あります。
また、杏奈とマーニーがオレンジ色に染まる大河をカヌーで横切るシーンは、夕暮れの釧路川を連想させます。
住所: 〒084-0922北海道 釧路市北斗2-2101
https://goo.gl/maps/xkvspVUfVYjyvK9HA
■厚岸駅
釧路中心部から、根室方面に車で約1時間のところにある厚岸駅。
厚岸駅は、杏奈の親戚の家がある「岸崎別駅」のモデル(駅舎は北海道の別の駅のイメージ有り)ではないかと言われています。確かに、アニメの中で登場する1両編成の列車は、JR花咲線の車両によく似ていますね。
厚岸駅から徒歩圏内には道の駅があり、厚岸湾を眺めながら、名産である牡蠣やウイスキーなども楽しめますよ。
住所:〒088-1124 北海道厚岸郡厚岸町宮園1丁目
https://goo.gl/maps/iSP8tXG1RSZhrV789
■藻散布沼(もりちっぷとぅ)
続いてご紹介するのは、屋敷周辺の湿地帯のモデルと言われている浜中町の「藻散布沼(もりちっぷとぅ)」。
厚岸から厚岸大橋を渡り、海岸沿いに車で約30分ほど走った場所にある、小さな海跡湖です。原生林が生い茂り、水面からボコボコとヤチボウズが顔を出している沼地の風景は、アニメ内の"湿っ地屋敷"の風景を思わせます。ここでは、タンチョウ鶴が営巣し、冬には白鳥の越冬地ともなるそうです。
藻散布沼の先端にある船着場は、基本的に立ち入り禁止なので訪れる際は注意してくださいね。
住所:〒088-1538 北海道厚岸郡浜中町藻散布
https://goo.gl/maps/Xw3Ss1wEVZ6KcGat6
■霧多布湿原(きりたっぷしつげん)
藻散布沼から海岸沿いをさらに東にいった場所にある「霧多布湿原(きりたっぷしつげん)」も、"湿っ地屋敷"周辺のモデルといわれています。アニメのエンディングカットで登場する沼地が、霧多布湿原の雰囲気によく似ているそうです。
霧多布湿原を訪れるなら、琵琶瀬展望台からの景色がおすすめです。広大な湿原に琵琶瀬川が蛇行している様子は、日本の風景とは思えないほど壮大で素晴らしい景観ですよ。
そして、霧多布湿原からさらに東に進むと、太平洋に突き出す霧多布岬に到着します。霧多布岬は、野生のラッコが繁殖していることで話題となった場所でもあります。運が良ければラッコ達が海に浮かんでいる姿を見られるかもしれません。
住所:〒088-1522 北海道厚岸郡浜中町湯沸
https://goo.gl/maps/99urTt9zcHnyzr5YA
■厚岸真龍神社
杏奈がいやいやながら同世代の女の子信子といった七夕祭りの会場のモデルといわれているのが、「厚岸真龍神社」です。アニメと実在する神社では、鳥居の場所が少し違うものの、境内や鳥居の形はそっくりとファンの間でも話題になったようです。
厚岸駅から徒歩でも行ける場所にあるので、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
住所:〒088-1124 北海道厚岸郡厚岸町字宮園町146番地
https://goo.gl/maps/z474aKP9tn1Rujgy6
まとめ
以上、アニメ「思い出のマーニー」の舞台として北海道の釧路管内が選ばれた理由を紐解きながら、アニメの聖地となっている場所5つをご紹介しました。
釧路を始めとする「道東」は、北海道の中でも手付かずの自然が残っている貴重な地域。アニメの舞台となった聖地を巡りながら、自然豊かな北海道を満喫してみてくださいね。
ライター:たまぽん通信編集部 いなば
参考文献
【明日の金ロー】"脱宮崎駿監督"をテーマに、北海道を舞台に少女の成長が描かれる「思い出のマーニー」(スポーツ報知) - Yahoo!ニュース
思い出のマーニー聖地巡礼・ロケ地!アニメロケツーリズム巡りの場所や方法を徹底紹介!
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