2023/09/29

インタビュー

岩手の農業法人・西部開発農産の照井社長にインタビュー|レストラン・通販・ふるさと納税など多くの挑戦に挑む情熱の源とは

2023年6月発売の『岩手めんこいテレビプレゼンツ 4等級以上の希少和牛を贈ろう! 甘い赤身&脂さっぱり「きたかみ牛」BOX』に商品を卸していただいているのは、岩手県北上市(きたかみし)の企業・株式会社西部開発農産です。

広い土地や変化に富んだ気象条件などの資源に恵まれ、日本の食料供給基地の役割を担っている岩手県。
実は西部開発農産は、県内はもとより
日本国内でも知名度の高い農業生産法人なのです。


この度、社長の照井 勝也氏に特別電話インタビューが叶いました!

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岩手県だけでなく日本有数の農業リーディングカンパニー・西部開発農産|もったいない精神で土地を拡大

―実は商品化の際に存じ上げなかったのですが、かなり広大な農地を扱う有名農業法人なんですね。
ダイヤモンド編集部の「担い手農家アンケート」(農家に「理想的と思える農家」を聞いたアンケート結果)でカリスマ農家として名を連ねていて、驚きました。

いえいえ、そんなことはないのですが......
ただ、確かに土地面積だけは広大なんです。創業当時は10haほどでしたが、
現在は900haもあります。

―900ヘクタール......‼ ちょっと広すぎて想像がつかないですが、ものすごい数字ですよね。
どうしてそんなに広くなったんでしょうか?
(※ 筆者補足:東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを合わせた面積は約100haで、その9つ分という広大さ)

当社が積極的に増やしてきたというより「できるだけ断らなかったから」ですね。
時代が変わって、就農人口が減ったり高齢化したり価格が下落したりで離農が進んでしまい、農地の耕作依頼が増えたんです。

 

正直、条件が良いとは言えない土地も多くあります。
しかし耕作に適していない土地も最大限に生かせるよう努力し続け、地域の農地保全を行なってきました。
ひとえに「食の重要さを感じ、食を生み出す大きな資源である農地を守りたい」と考えた結果です。

―素晴らしいお考えです......!
会社概要を見させていただくと、畜産だけでなく米・大豆・小麦・蕎麦・野菜・加工食品など、手広く事業をされていますよね。

 

はい。実は畜産より米・大豆・小麦などのほうが有名でして......

日本農業法人協会に入っているおかげで各都道府県の意欲のある農家の方々と接することができ、広く全国各地の農家さんと交流しながら日々学びを深めています。



「きたかみ牛BOX」でおすすめの部位はすき焼き⁉ 多数の賞を受賞してきた肉質の良さ

―『「きたかみ牛」BOX』は、おかげさまでご購入いただいた方から非常に好評です。

 

ありがとうございます。畜産部門は1996年に導入しましたが、担当者がずっと頑張ってくれていて......
肉質が1番の自慢です。
4等級以上は上物(じょうもの)と呼ばれるのですが、うちの上物率がここ6年くらい100%なんです。

 

―すごい数字ですね! 確か「きたかみ牛ブランドは4等級以上」と決まっているとか......

 

はい。
全国的に有名なのに「肉質等級3から5」「1から5」の黒毛和牛ブランドもある中で、きたかみ牛は
ムラや外れが無い牛肉と言えます。

 

5年に1回の「和牛のオリンピック」と呼ばれる全国和牛能力共進会がちょうど去年(2022年)鹿児島県で行われ、当社の牛が岩手県代表として選抜されました。もう4回ほど連続出場させてもらっていますね。


「脂肪の質」は霜降りやサシの入り具合などの見た目ももちろんですが、最近はMUFA値も評価される指標の1つで、近年はその部分もご評価いただけるようになってきました。

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―MUFAとは、脂肪の質に関する数値ですか?

 

はい、一価不飽和脂肪酸(monounsaturated fatty acid:MUFA)の値のことです。
オレイン酸などのMUFAの含有率が高いと脂肪の融点が低くなるため、
口溶けの良さが向上してしつこくない脂になると言われています。

 

質の向上は育て方次第ですが、詳しくは各農家の企業秘密です。
牛は特に暑さに弱いので夏には
24時間扇風機を付けたり、何の餌をどういうタイミングで与えるか吟味したり、畜産課の社員は本当に日々頑張ってくれています。



―そうなんですか......愛情を持って育ててらっしゃるんですね。
先日私も「きたかみ牛 モモ 焼肉用 500g」を食べたのですが、柔らかくておいしかったです!

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そう言っていただけると嬉しいです。
モモやカルビも人気ですが、
サーロインも脂の質が良いので「とてもおいしい」と評判です。
脂が苦手な方には
すき焼きもおすすめですね。万人受けする食べ方だと思います。



今後やっていきたいことは、直販ルート(直営店)強化と商品開発(レトルト食品など)

―今後、会社として力を入れていきたいことは何ですか?


そうですね。主に2つありますが、1つ目は直販拡大(直営店の強化)です。

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1986年に父・照井 耕一が家業だったものを法人化し、私が2代目に就任しました。
直営店「せいぶ農産発 焼肉DINING まるぎゅう」開業は、私が社長になってから始めたことなんです。

 

もともと長男なので家業を継ぐつもりでしたが、実家に戻る前に居酒屋に就職していた経験がありまして......
その知識がなければ、正直思いつきもしませんでしたね。

 

―育てた作物をそのまま出荷するだけでなく、加工・直接販売でお客さんに食べてもらって喜ばれるなんて、とても達成感が高そうな仕事ですよね。

 

はい、実際にお客様に「おいしい」と言ってもらえることは励みになります。
「当社の農作物を
より多くの方に知ってもらいたい、もっと満足してもらいたい、それを実感したい」という思いで始めた事業なので、ワンストップで提供可能なこのビジネスモデルには大きな意味がありますね。



また、こういった動きは一般的に「6次産業化」と呼ばれることでもあります。

 

農業は天候に左右されるリスクが大きいので、手広く取り組むことはリスクヘッジにもなるんです。
もちろん作物の種類を増やすなど色々工夫はしていますが、他業種にも積極的に取り組んでいます。
畜産部門や飲食部門だけでなく、農業機械修理整備販売や土木建設業も行っているんですよ。

 

※ 6次産業化......農林漁業者(1次産業)が生産物の価値を上げるため、生産だけでなく食品加工(2次産業)や流通・販売(3次産業)にも取り組み、農林水産業を活性化させて農山漁村の経済を豊かにしていこうとするもの



2つ目が商品開発(レトルト商品などの展開)です。

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現在既に「牛すじカレー」「チリコンカン」「牛すじ煮込み」「すき焼き丼」「ビーフシチュー」の5つを販売しています。無添加味噌や乾麺セットと並んで通販でのランキングも高く、たいへんご好評いただいています。

 

―ふるさと納税の返礼品にも登録されていますよね?

 

はい。お米や肉やレトルト食品など、多数出品中です。
今後も
新しいことにはどんどん挑戦していきたいですね。



日本の農業の課題は人手不足と食料自給率の低さ|「お客さんに喜んでほしい」という強い想い

―「農業は天候に左右されやすい」というお話についてです。この夏は過去にない猛烈な暑さでしたが、生育には影響がありましたか?

 

はい。岩手もものすごく暑い日が続いて、過去にないレベルでした。

 

実は先週の木曜(2023年9月7日)から稲刈りが始まったんですが、去年よりも1週間早くて......
こんなに早く稲刈りをするなんて過去に1度もないんです。
それだけ生育が早く進んだということでもありますが、もしかすると高温障害の影響も多少あるかもしれません。

 

―今後も気候変動は続いていくでしょうから心配ですね。他に課題はありますか?

 

農業全体の課題として、人手不足や食料自給率の低さがあります。

 

農業は、毎年毎年従事者が減ってきているんですよね。
高齢化ももちろんですが、若い方がなかなか新規で参入してくれないことも要因です。
「是非やりたい」と思えるような
魅力のある仕事として、彼らの目に映っていないわけです。



例えば、昨今は円安やロシアによるウクライナ侵攻によって肥料や農薬などが値上がりしているのですが、「上がったコスト分を簡単に価格転嫁できない」という問題があります。

 

その点フランスでは「エガリム2法」が制定され、農産物の生産コストに基づく適正な価格転嫁を認めて農家報酬を守ろうとする動きが強まっているんですよね。
「日本でも、もっと国が介入するなどして改善できないだろうか?」と考えてしまいます。



また、私は以前から食料自給率を問題視しています。
たった38%くらいしかない、つまり輸入に大きく依存しているわけです。今後長きにわたって思うように輸入できる保証はないので、危険だと思います。

 

再びロシア・ウクライナの話に関連しますが、あの辺りは穀倉地帯でして。戦争により小麦が取り合いになり、相場が上がる問題が勃発しました。日本は小麦の輸入元が主にアメリカ・カナダなので、すぐに「輸入できない!」とはなりませんでしたが、小麦価格は上昇しています。

 

万が一調達先がなくなると、文字通り食べていけなくなってしまうんですよね。
消費者の皆様には是非その辺りを理解していただき、なるべく国産の食品をご購入していただければ幸いです。

 

―そうなんですね......! 飽食の時代に生まれた私たちには実感が湧かないですが、よく考えたら確かに不安ですし、これからは国産商品を応援していきたいと思います。





最後に、商品をご購入いただくユーザー様にひと言お願いします!

 

はい。農業は「食糧を作る仕事」であり、食糧は人間が生きて行く上で絶対になくてはならないものです。その部分は、絶対的な自信を持って取り組んでいます。

 

しかし、確かに今は色々な種類の食べ物と出会える時代でもあります。
食料の分野では、「生命を維持する」以上の機能......具体的には
「せっかく食べるなら"おいしいもの"を楽しく食べたい」という欲求を満たすことが、今後さらに求められるのではないでしょうか。

 

私たちは「自分たちの作ったものでお客さんに喜んでもらいたい」という気持ちを胸に、今後も地道にコツコツ励んでいこうと思います。





お話を聞かせていただく中で、照井社長の実直なお人柄と従業員・地域への熱い想いが伝わってきました。

 

西部開発農産は、早くからJGAP認証を取得したり従業員が気持ちよく働けるよう気を配ったり、学生の研修・体験に積極的に対応したりするなど、単なる1農業法人に留まらない先進的な取り組みを行っています。

 

※ JGAP認証......農場やJAなどの生産者団体が活用する農場・団体管理の基準で、農林水産省が導入を推奨している農業生産工程管理手法の1つ



「日本の地方には、まだまだ優良企業や素晴らしい人材に溢れている」という実感を得られ、とても嬉しくなりました。引き続き、たまぽんギフトを通じて日本のローカル事業を応援していきたいと思います!

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ライター:たまぽんギフト編集部 sugamari

 

参考URL

西部開発農産

農業生産法人西部開発農産 - 地域の農作業を請負い 6次産業へも進出

最高級和牛目指す 全共出場の西部開発農産【北上】

第12回全国和牛能力共進会受賞牛名簿

Q22 牛肉中のオレイン酸が高いとどうなるのか?また含有率は ...

農山漁村での「6次産業化」とは、どのようなことですか。

その1:食料自給率って何?日本はどのくらい? - 農林水産省


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